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第3回 経済地理学会論文賞授賞式

去る2016529日に九州大学箱崎キャンパスで開催された経済地理学会大会総会の際に、第3回経済地理学会論文賞の授賞式が行われました。受賞者、受賞論文及び受賞理由は下の通りです。

160529学会賞授与式②

3回経済地理学会論文賞 選考結果

 

受賞者名:陳

受賞論文:「中国福建省内陸農村における野菜生産の拡大と農家の就業構造」

(経済地理学年報第60巻第1号,2014年,1-22ページ)

受賞理由

 本稿は,中国における近年の商業的農業の進展が農村の就業問題にどのような影響を与えているのかを,福建省の内陸農村での丹念なフィールドワークによって考察した研究である.研究の成果として,対象地域では2000年以降に野菜生産が拡大し,作付面積の広い農家では多様な野菜栽培を通じて高収入を得ている一方で,零細な農家では一部の労働力を農外就業に投入し,野菜栽培は少数品種に特化する傾向にあること,野菜生産の拡大は女性を中心に野菜の包装作業などの新たな就業機会を提供したこと,野菜生産の拡大にもかかわらず,村を出て沿岸部の大都市で就業する若者は依然として多いが,都市部での就業をやめて村に帰還し農業に従事する者も見られるようになってきていることなどを見出した.

 中国の商業的農業については,従来の研究では専ら大都市近郊農村が注目され,大都市から離れた農村は,貧困や低生産性で一括りに語られることが多かった.本研究は,中国の大都市近郊ではない地域の野菜生産の拡大に着目し,就業構造の変化を論じている点でオリジナリティがある.また,本稿で明らかにされた農村部における雇用の多様化および出稼ぎ者の帰農の進展などは日本とは異なる動きとして注目に値する.本研究は,農業地理学の正統的な方法に則り,個別農家に対する綿密な聞き取り調査に基づき論を展開しており,中国農村研究への経済地理学独自の方法による貢献と位置づけることができる.

 以上の理由により,経済地理学会論文賞選考委員会は,受賞論文が,内規第3条で規定される対象論文のなかでもっともすぐれた論文であると判断し,陳林会員を第3回経済地理学会論文賞候補者として推薦する.

201649

 

3回経済地理学会論文賞選考委員会:岡本耕平(委員長),荒木一視,池田真志,川久保篤志,土屋 純,長尾謙吉

 

  • 投稿日:2016年06月13日
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